第11章 死者の夢
「……ドフィに撃たれたとき、死はもう避けられなかった。でもまだもう少しだけ、頑張らなきゃいけなかった。ローを逃さなきゃいけなかったんだ。血が流れていって寒かった。まざまざと死を感じたよ。ローがちゃんと逃げられるか心配だった。オペオペの実をちゃんと使いこなして病気を治せるか……治ったところで頼れる大人もいなくて、ちゃんと生きていけるか心配だったんだ。でかくなったあいつの姿を、たとえ夢でもいいから、ひと目見たいと思った」
自分の想像する最上の未来より、いい夢だった。
ローは仲間に慕われて、怒ったり心配したりしてくれる女の子がそばにいてくれて、あんなに辛いことがあったのに、ちゃんと人を愛せる人間になって、幸福そうだった。
「……もういいよ、ちゃん。ありがとう、幸福な夢を見せてくれて。もう十分だよ。あいつを起こしてやってくれ」
コラソンの言葉で、も思い出した。
ケトスは夢を司る神獣。時空を超えて夢を覗き見る能力を持つがために、予言を授けることを可能にする。
本来それは覗くだけで、過去や未来の夢に干渉することはできない。でもユメユメの能力者なら別だ。
ハートの海賊団の仲間を救うため、夢に干渉して彼らを起こそうとしたは夢の主から取引を持ちかけられた。本来会えるはずのない人と交流できるという甘い言葉。
(キャプテンにもう一度、コラさんを会わせてあげたいって思っちゃったんだ。ずっと、自分のせいだって責めてたから……)
本物のコラさんはきっとそんなことはないって否定してくれる。もうが大好きな人のためにできることはいくらもなく、タイムリミットも近くて、一瞬迷ってしまったら取り込まれてしまった。
(早くみんなを起こさなきゃ。衰弱死して骨になっちゃう……)
でもそれは、この幸福な夢が終わることを意味している。
(キャプテンにもう会えなくなるんだ……)
ぽろぽろと涙がこぼれた。コラソンはぎょっとして、をなだめる。
「ご、ごめんちゃん! ちゃんが辛いなら、もう少しだけこのままでもいいよ。ローもそのほうが嬉しいだろうし……死ぬギリギリで起こしてくれれば」
涙をふいて、は首を振った。