第11章 死者の夢
はちょっと拗ねたように「今は可愛くない?」と口をとがらせた。
「甘さ控えめがいいって言ったの誰だっけ?」
「やっぱり甘々がいい……」
笑ってローは「今のが一番可愛い」と額にキスした。
「だからそろそろ動いていいか?」
「だからの意味がわかんないよ……」
甘い雰囲気に持っていったら何をしてもいいと彼は思っているフシがあるらしかった。
だから控えめがいいと言ったのに、可愛いと言ってもらいたくて、つい油断してしまった。
「ひゃ、あ……っ」
ゆるく突かれているだけなのにびくびくと下肢から奥まで痙攣して、泣きながらは快感に喘ぐ。
「奥が弱くて可愛い。すぐイッちまって泣いちまうのが可愛い」
「そ、そんなの全部言っちゃダメ……」
「甘々がいいって言ったろ」
「だって溶けちゃうよ……」
「溶かしたいな」
指を絡めて触れるだけのキスが落とされ、ぎゅっとはローに抱きついた。
(大好き……)
抱き合っていると幸福で、全身甘くなって溶けそうで、気持ちよくて、泣きじゃくると安心させるように好きだってささやく声が心地よくて。
「キャプテンの女みたらし……」
「そろそろみたらしって呼んでくれ」
「知らない間にバージョンアップしたの!?」
「専属ってこと」
彼の笑う声が好きだ。笑ってくれると嬉しくて、ぎゅうっと抱きつきたくなる。
(すごく幸せなのに……どうしてだろう)
永遠に叶わない幸福な夢を見ているような、儚い気持ちになるのだ。
(夢……そういえば、ケトスが話しかけて来ない)
あの寂しがり屋の海神は、誰かと喋るのは数百年ぶりだからといつもひっきりなしに話しかけて来たのに。
(私、何か忘れてる……? キャプテンにすっごく大事なことを伝えなきゃいけないって思ってこの島に来たはずなのに)
思い出せるのは断片的なことだけ。青虫はそのうちのひとつだったが、どういう意味があったのかは思い出せない。
「そういえばキャプテン、青虫探してくれた?」
「う」
その話はやめよう、と彼はごまかすようににキスした。
「青虫と浮気したの!?」
「してない!!」
焦るところが怪しい。みたらしとかちょっと前に言った口で。