第11章 死者の夢
「愛してる……」
「……私そろそろ、砂糖菓子になって溶けちゃいそう」
ぼやくと彼はやっと少し笑ってくれた。
「だからは全身こんなに甘いのか」
おやつにちょうどいいとばかりに指先を舐められる。
「あ、甘くないもん」
まさかそんなことないだろうと、こっそり自分でも舐めてみる。やっぱり甘くなんてなかった。
「足りないか? もっと言って甘くしようか」
「溶けちゃうからダメ。そういうのは控えめがいいの」
「から甘さ控えめなんて言葉を聞くとはな」
おかしそうに笑って、彼はの髪を指に絡めた。くるくるねじられて、引っ張られて、さらには毛先でくすぐられた。
「キャプテン私で遊んでるでしょ」
「まあ楽しいのは否定しねぇが」
拗ねるの機嫌を取るように、ローはまぶたにキスした。抱きつくに応えて抱き寄せながら、「髪のびたな」と彼は指先で梳いた。
「短いほうがいい?」
「いいや? 短いのも可愛かったけどな。……初めて会った時、背中まであったろ。あれも可愛かった」
よく覚えてるね、とはローの鼻先にキスしながら照れて笑った。
「……お母さんがね」
「ん?」
聞き返す彼の声が一段優しくなる。髪をすく手に頭をすり寄せながら、は幼い頃の思い出を語った。
「お母さんのハチミツ色の髪がすごく好きだったの。ふわふわで、いつもいい匂いがして、金のドレスみたいだった。お母さんみたいになりたくて、小さい頃からずっと髪を伸ばしてたんだよ。でも私の髪ってまっすぐだから伸ばしてもお母さんみたいにならなくて、駄々こねて小さいボールみたいなの巻いてもらったりして。お母さんに髪をやってもらうのが大好きだったの」
会ってみたかったな、とローはの髪に唇を寄せてささやいた。
「の母親なら、きっとすごい美人だろ」
「ど、毒牙にかけちゃダメ……」
「そこまで節操なくない」
拗ねたように彼は言う。でも自業自得だとは思う。顔に出ていたのか、彼が苦笑する気配がした。
「の髪は母親譲りだったんだな」
「小さい頃はもっと赤毛だったの。全然似てなくて悲しかった」
「赤毛のも見てみたかったな。絶対可愛いだろ」