第11章 死者の夢
ローがところかまわずいちゃつくのでたまに肩身が狭そうにしているが、日中との生活は楽しそうだった。やせ細っていたのもだいぶ回復して、が支えて近所を散歩もするので、体力も以前よりはついてきたようだ。
「そうだ、キャプテン。青虫を探して」
「鳥の餌か?」
「ううん」
「……まさかが料理の材料にする訳じゃねぇよな」
「もう奴隷じゃないから虫なんか食べないよ」
奴隷の時は食べてたのか。たまにの可愛い顔から出る壮絶な過去話はどれも絶句ものだった。
「何に使うんだ?」
きょとんとして、は小首を傾げた。
「……何だっけ?」
「うん?」
「キャプテンに言わなきゃって思ったんだけど……でも探してほしいんであって、取ってきてほしいわけじゃないの」
「探せばいいのか?」
「うん」
「……わかった、探しとく」
の言動が変わっているのはいつものことだ。真剣な様子で頼まれたので、なにか大事なことなんだろうとローはうなずいた。
◆◇◆
「助けて! ミケが滑って壁に激突した!!」
「獣医に行け」
目を回しながらもニヤニヤ笑いを浮かべている猫を連れて診療所に駆け込んできた子供を、ローは追い返そうとした。
「医者が患者を見捨てるのかよ!」
飼い猫を突き出してコリンは弾劾した。
「俺は人間専門だ」
「クマは見るんだろ!」
「例外はシロクマだけだ」
「このヤブ!」
「うるせぇ」
騒がしいので仕方なくローは不気味な笑いを浮かべるニヤケ猫を受け取った。
「脳に異常なし。そのうち起きるだろ。水でもぶっかけろ」
「ちゃんが倒れたらそんなこと絶対言わないくせに」
「をそんな不気味と猫を一緒にするな。あと馴れ馴れしく呼ぶな」
「ちゃんが呼んでいいって言ったもん」
が甘やかすからこのザマだ。外見も中身も可愛いは街の人気者だった。既婚者と知りつつ告白してくる男があとを絶たず、しまい込んだ鬼哭を持ってぶった切りに行こうとしてはコラソンに止められるのを何回か繰り返している。
「フニャ……キャキャキャ」