第11章 死者の夢
「いただきます」
3人で手を合わせて食事にする。その何気ない光景が、毎日泣きたいくらい嬉しい。
「、梅干しどれだ?」
「ええとね、こっち側の3つ」
大皿に載った3つのおにぎりを、ローはコラソンの方に向けた。
「うまいのに。一個やろうか、ロー?」
「いらない」
子供みたいな会話にがくすくす笑う。
「そうだちゃん、さっき巣箱に鳥が来てたよ」
「ほんと? どんな鳥?」
「あれは多分ムクドリかな。スズメより大きくて、黒っぽかった。夫婦で仲良く来てたよ。今度エサ台も設置しようか」
「うん!」
生き物が好きなはもこもこの猫を飼いたがったのだが、あいにくコラソンがアレルギーだった。生活圏を離すことも考えたものの、くしゃみを連発するコラソンに、は自分から諦めることを決めた。
コラソンが鳥の巣箱設置を提案したのは罪悪感もあるだろうが、二人で楽しそうに作業する様子を見るのがローは好きだった。
「お味噌汁おいしい?」
「ああ、おいしい」
「ちゃん料理上達したね」
コラソンに褒められては本当に嬉しそうに笑う。目が見えないのに料理がしたいと言い出した時は止めようかとも思ったが(船の料理当番は皮むき専門だった)、好奇心旺盛でやたら自立心が高いは何でもやりたがる。毎日楽しそうなので、心配からとはいえ行動を縛るようなことを言わなくてよかった。
「ごちそうさま。……じゃあ行ってくるか」
「行ってらっしゃい」
見送りに駆けてきたをハグしてキスして別れを惜しむ。これがないと仕事を頑張る気になれないのだが、行きたくなくなるのも事実だった。このまま一緒に遊びに行きたい。
「次の休み、どこに行きたい?」
「ええとね、森でキャンプしたい!」
「よし。焚き火でマシュマロでも焼くか」
「おいしそう! コラさんも一緒に行く?」
「俺はいいよ。ずっと森で暮らしてたし、留守番してる」
「じゃあコラさんのお弁当作っておくね」
新婚なので恩人は色々と気を使ってくれているようだった。はじめは同居も固辞していたのだが、が「ダメならここでキャンプして暮らす!」と言って無理やり森の家から連れてきた。