第11章 死者の夢
高齢で医者がいなくなった近くの診療所で患者を診るようになって三ヶ月。こんな感じで気まぐれなので、なかなか経営が軌道に乗らない。とはいえ手術の腕は的確なので、訪ねる患者が切れることもなかった。
食べていくには十分だし、金儲けよりを構いたかった。老後の資金はそのうち海賊の首でも心臓でも狩ろう。
「今日何曜日?」
キスの合間には尋ねた。
「水曜だ」
「じゃあ病院の日だよ!」
しまった気づかれた。は起き上がって「キャプテン支度して!」と急かす。
「いいよ、午後からにするから」
「ダメ。患者さん待ってるよ」
最近こんな感じでごまかしが効かなくなってきた。仕事よりいちゃつきたい、とローは訴えたが、は聞いてくれなかった。
「最近冷たい。もうちょっと俺を構ってくれ」
「休みの日と帰ってからはちゃんと構ってるよ!」
「足りない」
後ろから抱きしめて首筋にキスしてみたが、「お医者さんはみんなのこと考えなきゃダメ!」と言われてしまった。
「ちゃんと考えてる。一番が、二番目がコラさん、三番目がクルーで四番目が俺、患者は5番目だ」
そのクルーたちはペンギンを暫定の船長として、3ヶ月前に出港した。
船長決定戦の結果が微妙な判定勝ちだったらしく、納得行かないとずいぶん揉めていたが、時折届く手紙によるとたまに決闘で船長が代わりながらも楽しくやっているらしい。
「急いで急いで。ごはん作るから顔洗って来て」
華麗にスルーされた。面白くなくてローはを捕まえると、そのままベッドに戻って二度寝の態勢をとった。
「今日は仕事する気分じゃない。と遊ぶ」
「こ、コラさーん!」
困ってはローの恩人を呼んだが、一階で生活している彼は足が不自由なので夫婦の寝室がある二階には上がってこれない。
階下から「頑張れちゃん!」と応援があった。
「最近忙しかったし、が足りない」
屋根の修理してたら足を滑らせて落ちたとか、自転車でこけて足を折ったとか、診療時間外の急患が多かったのだ。
甘く耳に噛みつきながら「が足りないと死ぬ病だから補充させてくれ」と頼むと、やっとは大人しくなった。