第11章 死者の夢
元カノが来るじゃないかと、は心配そうに顔をきょろきょろさせた。
ローとしては本気で反旗を翻すクルーが居るんじゃないかと気が気じゃなかった。
「いいのか、ウニ。最後の機会だぞ」
「うう、言いたいことはあるけど……っ、いっぱいあるけど! いいんだ、あとでキャプテンを海に放り込むから。それで全部チャラにする」
同郷のイシリーに悔し涙をこらえてウニはもらしていた。あとの余興が怖い。
「汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くし、二度と泣かせないことを誓いますか? 具体的には寂しいからって娼館で全員と寝たり、クルーの毛をむしったり、無闇やたらと海賊にケンカを売って瀕死にしたあげく、治療と言いながら教材にして医学の授業を強制したりしないと誓いますか?」
なんか誓いの言葉が違う。参列者のほうを見ると、ペンギンたちがニヤニヤしていた。
(あいつらも後で締める……)
思い出したが「2回目は耐えられない……」などと言っている。無事に結婚できなかったらどうしてくれるんだ。
「二度としない。誓う」
牧師よりを見て、ローは慌てながらも心から誓った。
うなずき、牧師はを見た。
「汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか? 具体的にはメンタル弱って情けないときも、大人げなくなって子供みたいな言動をしたときも、執着心が強くて鬱陶しいときも、これを許し、愛し続けると誓いますか?」
「が、頑張ります」
そこは力強く誓ってほしかったのだが、「隠し子は無理……」と言うところを見るに、ローの想像する最悪の未来より30倍はひどいものを想像して、なお頑張ると言ってくれているらしい。
「いい子だなぁ。大事にしなきゃバチが当たるぞ、ロー」
コラソンが寝言でむにゃむにゃ言っている。頑張って結婚すると言ってくれただけありがたいとローも思うことにした。
いろいろ前科があるのは事実なので、これから一生をかけて信頼を取り戻していこう。