第11章 死者の夢
「他に清算忘れてることない?」
頼むからそんな今にも元カノが「こんな結婚認めないわ!!」と包丁持って乗り込んでくるじゃないかみたいな不安な顔はやめてほしい。結婚式の新婦って普通はもっと幸せそうにしてるものじゃないだろうか。自業自得ではあるのだが。
「あのローが……ドフィに異常に可愛がられて、ケガするたびにジョーラにリボン結ばれてたローが……」
コラソンは感激のしすぎでもう頭の中がだいぶ混乱しているらしい。もうローのことはそういう風にしか考えられないが最悪な想像をして顔色を真っ青にさせていた。
あの恩人は後で締めよう。というか今すぐ黙らせないと、割と真剣に今後の新婚生活が大変なことになる気がする。
ROOMを広げて、ローはコラソンの腹の中に酒瓶半分ほどの酒を移動させた。もともと酒にそんなに強くないコラソンは一瞬で泥酔し、「幸せになれよ、ロー!」と言いながら、潰れた。
(……よし)
この結婚式がつつがなく進むなら、ローは懸賞金が数億上がるような真似でも躊躇する気はなかった。と結婚するためなら常識とかどうでもいい。
(可愛いな……)
繊細なレースをふんだんにあしらったミニ丈のウェディングドレスを着たは妖精のようだった。
最初はドレスは『もこもこ』がいいと言っていたのだが、要望を叶えるべくローがベポの毛皮を狩ろうとしたら殺しはご法度と言われた。ローとしてはの欲しいものは何でも与えてやりたかったが、肝心のがもこもこじゃなくていいと撤回したので、しぶしぶ刀を引っ込めた。
自分の技術を持ってすればベポはちゃんと猫で言うところのスフィンクスみたいな感じになって、命の保証と毛皮入手という難題を両立できる予定だったのだが、『ベポがふわふわもこもこじゃなくなるなんてダメ!』との鶴の一声で方針は変更された(おかげでベポは九死に一生を得た)。
(ドレスがベポにならなくてよかったな……)
こんなに可愛いのに元がベポだったら複雑な気分になっていたと思う。というか結婚式なのにがベポの毛にずっと包まれているとか単純に妬く。
「この結婚に異議のあるものは今この場で申し立てよ。さもなくば永遠に口を閉ざすべし」