第11章 死者の夢
106.結婚式
ポーラータングの甲板で、ローとはささやかな結婚式を挙げた。
街には教会もあったが、慣れ親しんだ船の上がいいとどちらからともなく言い出して、自然と二人でそう決めた。
現在3回まで続けられている「ハートの海賊団・新船長決定戦!」で優勝者が出ていないため、新しい船長がおらず、進行しているのは教会から呼んだ牧師だ。
なんとか俺たちで式をしたい!とクルーたちは頑張ったらしいが、おかげでみんな顔に青あざ作って今にも倒れそうだった。
「あのローが、ちゃんと人を愛して結婚するようになるとはなぁ。あのローが……っ」
コラソンは参列席で最初からずっと号泣していた。「あのローが」と繰り返すのでは不審顔で、「キャプテンどんな子供だったの?」と結婚式の最中なのに小声で聞いてくる。
「普通だったよ」
「それは絶対ウソ」
みんな殺してやると爆弾持って乗り込んだり、人を刺したりする子供だったなんてに言えるわけがなく、ローは気まずい思いで黙秘した。本当のことを知られて「結婚やめる!」なんて言われたら困る。
「日常的にベビー5に金をたかったり、バッファローを買収してたあのローが……」
コラソンから明かされる衝撃の事実に、参列席のクルーたちはざわめいた。
「ワルだ……」
「今よりワルだったのかキャプテン……」
「そういえば初めて会ったとき、朝飯前に100人くらいは殺してるみたいな目つきしてた……」
「猟奇的な目つきしてた……」
参列席がうるさい。目つきが悪いのは生まれつきだっていうのにひどい誤解だった。
「キャプテン、子供の頃から女の人を食い物にしてたの……?」
にどん引きされてローは必死で否定した。
「たかった訳じゃない! アイス代借りただけだ」
「ちゃんと返した?」
正直ベビー5に金を返した記憶はない。ベビー5に借りたものを返す人間なんてドンキホーテファミリーにはいなかった。でもにまるで『女の純情もて遊んで金を巻き上げる最低な男』を見るような目を向けられて、ローは「今度会ったらまとめて返すよ」と約束した。