第11章 死者の夢
「夢だよ! 起きて!! 、取り込まれちゃダメだ……!!」
夢を司るヘイアン国の海神、ケトスは叫んだ。
彼がいるのは夢の中だが、そこには現実と変わらない光景が映し出されている。
ハートの海賊団のクルーは誰一人例外なく、島に上陸したから倒れていた。
伝説の島カナンは500年も前から、ユメユメの実の能力者が支配する夢の国だ。訪れたものは夢に囚われ、それが夢だと気づくこともなく、衰弱死するまで夢に囚われる。
島はそうして死んだ人々の、おびただしい白骨で埋め尽くされていた。
「……!!」
夢の国の存在をケトスは知っていた。ユメユメの能力はケトスの干渉をはじく、この世で唯一の夢を作り出すからだ。
仲間が危険な島に向かっていると気づき、は夢を通じて警告しようとした。しかしすでに能力圏内だったせいでは夢に囚われ、中に組み込まれてしまった。
「起きなきゃダメだ!! その夢は必ず破滅する!! 誰の心も粉々に打ち砕いてしまうんだ……!!」
叫びながら声は届かないとケトスは理解していた。
彼らが見ているのは幸福の夢だ。現実では起こりようのない幸福が、夢の中では実現する。それを否定して現実を選べる人間なんていない。
「嫌だよ、。僕を一人にしないで……っ」
数百年ぶりに現れた、自分の声を聞いてくれる王。失いたくないと、無意味と知りながらケトスは叫び続けた。