第11章 死者の夢
「お買い物したり、猫と遊んだりできる?」
「もちろん」
「秘密基地作ったり、岩に登ったり、ボートで川下りは?」
「それは俺が一緒にいるときにしてくれ」
遭難したり、落ちたり、流されたりする場面が容易に浮かんでローは釘を差した。はたまに自分の目が見えないことを忘れてないだろうか。
「キャプテンも一緒に遊んでくれるの?」
ローの提案にはキラキラと顔を輝かせた。退屈への不安なんて彼女は微塵も感じていないようだった。
力が抜けて、ローは笑った。がいるのに退屈なんて、そもそも成立するわけがなかった。
「当たり前だろ。のしたいことに何でも付き合う。のために何でもするって言っただろ」
抱き寄せて約束すると、は新しい島に上陸するときのような顔をした。
「楽しみだね! いっぱいいっぱい、一緒に遊ぼうね」
海より自分を取ってくれるんだと、そばにいてくれるんだという実感がやっとわいて、泣きそうな気分でローはを抱きしめた。
「……ありがとう」
愛してる、と自然と口から出た。はちょっと警戒した顔になって、「女みたらしはみんなにそういうこと言うんでしょ」と拗ねる。
「言わない。だけだ」
「し、信じないもん」
「結婚しよう」
「そんなことまでみんなに言うの?」
「俺と結婚したくないか?」
「したいよ。すっごく。……でも結婚詐欺の気しかしない。ハートの海賊団の船長だもん。女の人の心臓を射抜くのが得意だもんね」
「何ちょっとうまいこと言ってんだ」
ローは笑ったが、は拗ねた顔のままだ。
「OKはもらったし、いいけどな。がいつまで疑うのか、楽しみにしてる」
「結婚式したって疑うもん。絶対重婚で、隠し子が訪ねてきたりするんだよ」
「の中の俺のイメージってそこまでひどいのか」
「……だってこんなに幸せなこと、あるわけないもん」
確かに夢みたいだと、ローも思った。コラさんが生きていて、に再会し、こんな幸福が現実なのかと。
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