第11章 死者の夢
105.夢のような
失神するように眠ったの隣で、ローは一睡もすることができなかった。
の行く道を阻むことなんてできないのに、手放すのも嫌で、耐えがたくて、それを考えると眠れなかった。
ふかふかのきのこの上は寝心地がずいぶん良かったらしく、木漏れ日の下で気持ち良さそうに寝ていたは早朝を過ぎた頃に目を覚ました。
「んにゃ……」
「おはよう」
場所がわからず不安になる前に声をかけると、は「キャプテン」と本当に嬉しそうに笑った。
「おはよう」
目覚めの『ぎゅー』にハグを返す。これが今後ないなんて耐えられなかった。
「ん……」
キスするとはゆっくりと受け入れる。あと何回、とこういう時間が持てるだろう。
寸暇を惜しんで押し倒したローを、は嫌がらなかった。
「キャプテン元気だね」
「疲れたか? したくない?」
首を振っては笑った。
「キャプテンとするの好き……」
心臓を鷲掴みにされたみたいだった。そんなこと言われたら手放せなくなるのに、はそんなことちっとも知らない顔で世界一可愛らしく笑う。
「……はひどい奴だな」
「なんで!?」
好きって言ったのにどうしてそんなこと言われるのかわからず、は動揺した。そんな彼女をきつく抱きしめて、ローは気持ちを封じ込めようとした。
(離れたくない。せっかく会えたのに、また別れるなんて嫌だ。誰にも盗られたくない……)
が海に出たいと言うなら止められない。それは仕方ない。でも海に出た先で誰か他の男を好きになって、そいつのものになるなんて考えただけでおかしくなりそうだった。
「キャプテン……?」
思い詰めるローになにか察したのか、困惑した様子ではローの背中を撫でた。
「どうしたの? なにか悲しいの? みんなとお別れになるから……?」
クルーと別れるのは確かに寂しい。でもそれは納得しているし、どのみち永遠に一緒に居るわけではないのだから割り切りもついた。今生の別れではないのだから、またいつかどこかで会う機会もあるだろうという楽観もある。