第11章 死者の夢
ヘイアン国でも俺たちやマリオンの故郷を救うために自分を犠牲にした。誰よりも勇敢で、優しくて、強いのに、何もないなんて言わないでくれ。俺の一番大事な女の子を無能みたいに言うなんてでも許さないからな」
ローにしがみついてはわんわん泣いた。
「違うよ。私が頑張れたのは全部、ただキャプテンが大好きだからだよ。キャプテンがいなかったら私は、暴力に怯えて、泣くしかできない奴隷の頃の私と何も変わらないの」
過呼吸を起こしそうなほど泣きじゃくるに耐えきれず口づけて、深く舌を入れる。自分が好きだと泣くが欲しくて欲しくてたまらなかった。
「どうしたら安心できる?」
「わかんない。キャプテンのこと好きすぎて辛い。誰かに盗られるかもって思うと胸が張り裂けそうだし、キャプテンが誰か違う人を好きになるかもって思うと胸が潰れそう。誰かに嫉妬したり、そういう自分を嫌になったりするのも苦しい。苦しいからキャプテンを好きじゃなくなりたい」
「それだけは嫌だ」
そんなの許さないと、の白い首筋に噛み付いて歯を立てる。痛みにびくりと体を震わせたものの、は抵抗しない。抵抗もできないくらい自分が好きなんだと実感できて、おかしくなりそうだった。
「離してなんかやらない」
強引に押し倒して乱暴に抱く。誰より優しくしたいのに、まぎれもない本心なのに、全部自分のものにしたいのも本当で、コントロールできない。
「好きだ……っ」
醜い嫉妬心や独占欲はローの中にもあった。より数段ひどくて激しいそれを、にぶつけてしまうのが怖くてずっと封じ込めてきたのに。
「……そんな顔するが悪い」
乱暴にされても恍惚として、涙をためて快楽に震えるには何も通用しなかった。むき出しの本心をさらけ出されて、抗えなくて、息が切れるまで激しく何度も抱いた。
抱いても抱いても足りなくて、が欲しくて、どうすればいいのかすらわからなかった。
(離したくない。一緒にいたい……)
一緒にいてくれるなら何でもするのに。
でもそれを懇願することだけはできなかった。