第11章 死者の夢
月が明るくて、の顔がよく見えた。彼女はどこか不安そうにしながらも、ローの話を黙って聞いている。
「……好きだ。俺が本気で好きになったのはだけだ。本当に特別なんだ。自分の命とか、人生とか、とだったら分け合えるって思えた。辛いことは半分……いや、10分の1かな。楽しいこと、嬉しいことは倍以上。といるといつもそんな気分だった。一緒にいられるだけで幸福だった」
自分のわがままで引き止めることはできない。行かないでほしいと思いながら、そのために彼女の夢を奪うこともできなかった。
互いにやりたいことがあって、それが両立しない故の別離なら受け入れられた。ただ最後に自分の気持ちを伝えたい。
「傷つけてごめん。誰よりも一番を泣かせたくないのに、ひどいことしてごめん。会えないより、泣かれても怒られてもいいからの顔が見たかったんだ。それしか考えてなかった。浮気だっては思ってるかもしれないけど、誰かに気持ちが動いたわけじゃない。他の誰かと寝るときも、ずっとのこと考えてた。のぬくもりを思い出したかったんだ」
泣き出しそうな彼女の頬にそっと触れる。が嫌がらないので、そのままローはゆっくりと抱きしめた。離したくない。そのためなら何でもするのに、どうすればいいかわからない。
「……カナリアのことも?」
ローの腕の中で、はか細い声で言った。
「同情はした。本当に気の毒な境遇だったし、もこんな風に誰かにすがりつきたい日があったのかもしれないって思ったら拒めなかった。でも気持ちがあったわけじゃない。あの時はただお互いに、無性にそういうことが必要だっただけだ。……何度もの名前を呼んでたって言われたよ。悪かったと思うが、それだけだ。に対するような罪悪感はない」
口を結んで、はまだ黙っている。「やっぱり許せないか?」と、それも仕方ないと思いながらローは尋ねた。
「そういうことじゃない」
ぼろぼろとの目から大粒の涙がこぼれた。動揺し、拭いながら、それだけのことをしたんだとおののく。
「本当にごめん。気の済むまで蹴るなり殴るなりしてく