第11章 死者の夢
104.弱音
「んん、飲みすぎちゃった……」
「ほら水」
コラソンの家からだいぶ離れた森の中で、ローはソファにちょうどいい平べったいキノコの上にを下ろした。
ローに世話されるままは水を飲んだが、意識はまだぽやんとしている。
「アルコール抜くか?」
明らかに飲み過ぎな様子に心配して提案すると、はハッとした。
「キャプテンずるしたでしょ!」
「そうでもしなきゃ17人相手に勝てないだろ」
しれっとローは肯定した。能力で体内のアルコールを除けることを知っているのはだけなので、黙っててくれてありがたかったのだが、単に忘れていただけのようだ。
「んにゃー!」
不正に怒っては両手を振り上げた。酔い過ぎて人語すら忘れている。押し倒されて、ローはの体内から酒を抜いた。
「ほら、これでも共犯だな」
猛獣をなだめるように背中を撫でると、素面に戻ったは憮然とした。
「キャプテンはいっつもずるい」
「酔ってちゃ真面目な話ができないだろ」
そのために連れてきたのだ。
ローの雰囲気が変わったのに気づき、は焦って逃げ場を探した。周囲を触って不安そうにする。
「ここどこ?」
「コラさんの家からかなり離れた森の中。が一人で戻るのは無理だ」
圧倒的不利にはへの字口になる。思いつめた表情に、「そんな顔しないでくれ」とローは抱きしめて懇願した。
「が嫌がることはしない。約束する」
本当は今すぐ押し倒したい。ずっとずっと、だけを抱きたくてたまらなかった。
けれど彼女の顔に現れている不信の色に、ローは欲望を抑える。自業自得だから当然だ。
「……はまだ冒険したいか? 海に出たいよな」
なんの自由もない奴隷として長年海賊に囚われていたは広い世界に焦がれている。「全部行きたい」と言ったのはグランドラインに入ったときだったか。
の指先を握って、ローは自分の気持ちを話した。
「俺はコラさんを一人にできない。だからが航海したいって言うなら止められない。離れ離れになる前に険悪でいたくないんだ。俺の言葉を信じてほしい」