第11章 死者の夢
「うち恋愛禁止でしょ? ルールを破った船長の言うことなんか、誰も聞きませんよ」
ペンギンが意地悪く言う。ふん、とローは鼻を鳴らした。
「いざとなれば力ずくだ」
「1億5千万の賞金首は横暴ですね」
喧騒から少し離れて、明るく騒ぐ仲間を目に焼き付けるようにしながら、ペンギンがぽつりと確認した。
「……もう決めちゃったんですね」
「お前らには世話になったな」
北の海から、思えば長い付き合いだ。親友と呼べる唯一の仲間だった。
「ここでお別れみたいな言い方しないでくださいよ」
ずびっと鼻をすすってシャチが後ろにいた。
「……最後の宴だ。飲むか」
「今日は絶対キャプテンより先には潰れませんからね!」
「そりゃ無謀だな」
よーし勝ったやつはキャプテンが何でも言うこと聞いてくれるぞ!とペンギンが叫んで、全員が勝負に立候補した。
「何してもらおうかな、キスとか!?」
「絶対しない」
「その格好よさ半分分けて!」
「できるか」
「結婚してください!」
「予定があるんで断る」
「……女みたらしは予定いっぱい詰まってるもんね」
「! んな訳ねぇだろ!!」
クルーが何を言おうと冷静に返すのに、にだけは慌てる船長にみんな笑った。
キャンプファイヤーを燃やして宴は深夜まで続き、結局誰一人、ローに勝つことはできなかった。
「解散するなんて言わないで、キャプテン……」
飲みつぶれたベポが寝言でむにゃむにゃと言う。
「……悪いなベポ」
酔いつぶれたクルー全員、一人ひとりに毛布や上着を掛けてやりながら、ローは飲みつぶれたコラさんを能力でベッドまで運び、「みたらしは大福になんてなれないの」などと寝言を言っているを抱き上げた。