第10章 お別れ
(俺より……)
のほうがハートの海賊団と仲間のことを考えている。を失った自分の苦しみに手一杯で、クルーのことも思いやれていなかったことに気づいて、ローは何も言えなくなった。
『……もしかして、もう心当たりいる? 女の人?』
泣き出しそうな震え声で言われて、何のことかわからなかった。細い指を握りあわせて、は「わかってるよ」とささやく。
『キャプテン色男だもん。女みたらしだし、もてるの知ってるもん……』
涙をためながら言われてサン・マロウの一件だと思いいたり、言い訳できないことに愕然とした。
『違う、あれは……っ』
『……?』
がいなくて寂しくてたまらなかった。会いに来てくれないから八つ当たりだった。
口に出せないほど最低な言い訳しか浮かばず、事実なので、自分をめった刺しにしてやりたいと思いながら黙るしかなかった。
(なんで……)
なんであんな真似したのかわからない。だって寂しかったのに、それを彼女がどう思うかも考えず、本当に自分の苦しみしか見ていなかった。
これで最後なのに好きだと言えない。だけが特別だった、本当に好きだったと言っても彼女はもう信じてくれないだろう。裏切るような真似をしたのはロー自身だった。最後のプライドとして、軽薄に響くだけなのに自己満足のために口に出す恥知らずにはなれなかった。
『ごめん……』
それでもなら信じてくれるんじゃないかって思う自分を軽蔑する。
優しい彼女にずっと甘えていたんだと今更気づく。大事にしたいと思っていたのは確かに本心だったのに、それが出来るなんて思うのは傲慢だった。
実際はを守れず、傷つけるばかりで、それを自覚したらもう「別れたくない」なんて言えなかった。
『俺はにちっともふさわしくなかったな……』
『そんなことないよ! キャプテンは世界で一番かっこよくて素敵だよ! ……だから女みたらしになっちゃうのも仕方ないの』
しょんぼりとはうつむいた。