第10章 お別れ
夢で会えればそれでいい。たとえ夢でも、会えないほうが何百倍も苦しかった。そう言ったのに、は首を振るばかりだった。
『私は夢で会うほうが辛いよ。みんなと一緒に冒険したいのに、夢で見てるだけなんて辛い。お別れを言うためにケトスも夢をつないでくれたの。私はもうヘイアン国の王様だから、ちゃんとお仕事しなきゃ。みんなと一緒にもう旅は出来ないの』
受け入れがたい言葉に、ローは何も言えずにを見つめた。
ぎゅっと抱きついては「キャプテン大好きだよ」とささやく。
『大事にしてくれて本当に嬉しかった。みんなと旅をしてるときが人生で一番幸せだったよ。お別れ、ずっとちゃんと言えなくてごめんなさい。終わらせたくなかったの。みんなとのつながりを切りたくなかった』
『切らなくていい!』
旅がしたいなら、ヘイアン国に戻って、たとえどんなことになろうとさらいに行くから。あの時はそれがのためだと思ったが、旅がしたいと思ってくれているなら何を敵に回したって取り戻しに行く。
でもは「もういいの」とローの言葉を拒絶した。
『体だけ船に乗っても、もう何も感じられない。ソナーとして役に立てないのに、飾りとして船に乗るのは嫌』
希望が閉ざされていくのをローは感じた。夢でまたに会えるようになったら、それだけでいいと思い続けていたのに。
『誰か他のソナーを探して。新しい仲間と、みんなには旅を続けて欲しい』
安易にクルーを増やしたことをローは後悔した。もうが知るハートの海賊団ではなくなってしまったのだ。が戻りたいと思う場所を自分が奪ってしまった――。
『うちのソナーはだけだ。代わりなんていない』
『ダメだよ。せっかくの潜水艇なのに、潜れないなんて船が可哀想』
ソナーの説明を最初にした時、船の性能を全部引き出してあげられないなんて船が可哀想だとが言ったのを思い出した。だから頑張ってソナーも覚えると言ったとおり、は誰よりも優れた稀有なソナーになった。
そんなのことがポーラータング号も好きで当然だったと今更気づく。
だからがいなくなった船は静まり返って、かつての楽しかった頃の面影さえ失ってしまった。