第10章 お別れ
眠ると気配は感じるのに、は決してローのそばには寄ってこなかった。泣くのをこえらえているような感じはするのだが、が起こしてくれないと夢の中では自由に動けない。
わかっていてはローを起こさず、ただそばにいるだけで何も言ってくれないのだ。
(……そんなに意地張るならもう知るか。寝るのやめてやる)
ローも意地になって不眠を貫いた。5日ぐらいで限界が来て、精神的にもだいぶ辛かったが、それぐらいしないとは折れてくれない気がして。
寝不足で頭が働かず、意味もなくベポの腹を揉み続けていたら、やっとが会いに来てくれた。
『キャプテン! ベポいじめちゃダメ……!!』
怒っていようが泣いていようが関係なくて、とにかく抱きしめて充電した。
(ベポをいたぶればは出てくるんだな……)
『ベポいじめちゃダメだよ! わかった!?』
『知るか』
会いにこないが悪いのだ。毎日毎日、今日は会えるだろうかと不安と期待を抱えて寝ているのに、そんな気持ちをちっともわかってくれない。
『が全部悪い』
『ベ、ベポいじめるのはキャプテンが悪いもん……』
『が悪いから連帯責任だ。次に俺を放置したらベポをバラバラにして海に放り込むからな』
『船長がクルーをいじめちゃダメだよ!』
泣かれても怒られても、会えないよりそのほうがよくて、そのためだったらどんなひどい真似も平気で出来る。
『がいないのが全部悪い……』
いっそロートレックみたいにクルーを鎖でつないで酷使すればいいだろうか。それでがわんわん泣いて怒って毎日責めに来るなら、やる価値はあるように思えた。
『私だって会えなくてさみしいのに、自分ばっかり辛いみたいな顔しないで! そんな自分勝手なキャプテン嫌い!』
泣きながら非難されて、反射的に「ごめん」と言ってしまった。泣き止まないを抱き寄せて唇で涙をぬぐいながら、心から謝る。
『別れるのだけは嫌だ』
嫌な予感がして懇願したのに、泣きじゃくっては首を振った。
『ちゃんとお別れしよう? すごく悲しいけど、もう一緒に旅は出来ないの。これ以上キャプテンに、私のことで苦しんで欲しくないよ』
『嫌だ』