第10章 お別れ
96.別離
船の修理を待つ間に、ログポースの進路が書き換えられた。
と行くはずだった進路を失って、でもどんなにかその旅路に彼女が行きたがったかと思うと、それでいいような気もした。
「キャプテン、出発するって彼女たちに言ってこなくていいんですか?」
「別にいいだろ。あと数日で島を出るとは言ったし」
見送りにこだわりもなく、バッサリと船長は切り捨てた。
一ヶ月の間に、サロン・キティの20人の娼婦全員と寝たらしいともっぱらの噂なのに淡白なものだった。恵まれた男の無頓着なセリフにゴンザは渋面を作り、ペンギンとシャチは無表情になった。
新しく入ったクルーたちに出港の支度を指示する船長には、もう寝すぎのぼんやり感はない。
何をやってもが会いに来てくれないと一時期は荒れてひどかったが、がその気なら俺も知らねぇ!と寝まくるのはやめたらしい。
当てつけみたいにサロン・キティに通って、その態度もひどかったが、一日も泊まりはなかった。
どうも気を許せない相手と一緒だとゆっくり休めないようで、帰ってきて一眠りしては、会いに来てくれないに機嫌を悪くして、代わりにソナー席のミニベポの耳を引っ張っていた。寂しんだろうと思うと何も言えない。
もちろん、泣きながらが夢に出てきて「キャプテンなんとかして!」と誰かしらクルーのところに毎日来てることなんて言える訳がなかった。
(なんとかしてって言われてもなぁ……)
の頼みを聞いてやりたいとは思うのだが、どうすれば何とかなるのか、誰にもいい考えがないのが実情だった。
が泣きながら「嫌い!」って一言言えば、一発で改心しそうな気はするのだが。
(マリオンが居ればな。女装して『仕方ないからアタシで我慢して!』とか言ってくれそうなんだが)
(うわー、キャプテン嫌がってやめそう)
(背格好近いのはシャチか?)
(絶対嫌だ。俺はキャプテンになら掘られてもいいけど、女装で抱かれるのは断固拒否する)
(何その変な基準……)
ひそひそとクルーたちは話し合った。