第10章 お別れ
「必要なら探しに行け。俺は知らねぇ」
シャチが財宝に夢中なので、ローは様子を見に来たベポを引っ張って、もこもこの腹を枕に、甲板で二度寝した。どんな財宝よりも、もう一回、の夢が見たかった。
◇◆◇
「キャプテンまた寝てるの?」
何日かぶりで船番を交代に来たウニが、最近寝てる所しか見ない船長を心配してペンギンに尋ねた。
「しー。起こすと機嫌悪いから。そっとしとこう」
そう言うペンギンも何やら考え込む顔で、船長を心配しているらしかった。
まとめて洗濯したリネン類をたたむペンギンを手伝いながら、ウニは甲板で眉間にシワを寄せながら昼寝をしているローをうかがう。
「キャプテン、夜に何かしてるの?」
「いいや。夜も寝てるっぽい。しかも睡眠薬まで飲んで」
思ったより深刻な事態にウニも言葉を飲み込んだ。
「な、なんで……?」
「どうも……が夢に出て来てるっぽい」
ペンギンが答えるのと、ローが「クソっ」と毒づきながら起き出したのはほぼ同時だった。どうやら今回はは夢に出てこなかったらしいと、何となくウニも察した。
「おはようございます。飯ありますよ、食べますか」
「いや、いい。……ちょっと散歩してくる」
寝すぎでぼーっとしているのか、ローは刀を抱えて船を下りた。それがもう一度寝るために体を動かす散歩なのは明らかだった。
島では手当たり次第にケンカを買ったり売ったりしているらしく、連日乱闘騒ぎだった。ダイナの島ではローより懸賞金の高い海賊はおらず、目を合わせれば問答無用で切りかかってくる死の外科医を恐れて、最近では海賊たちがこそこそ逃げ出す始末だ。
逆にローの強さに惚れ込んで、「部下にしてください!」と押しかけてくる海賊も後を絶たない。その全てを船長は面倒がって「好きにしろ」と受け入れるので、知らない間にハートの海賊団は新しいクルーが8人も増えた。正直把握していられないし、当のローさえ「おかえりなさい船長!」と出迎えられて「誰だお前」と返す始末だ。
「またケンカしに行くの? それよりもっと、楽しいことしましょ」