第10章 お別れ
むーとうなったあと、は諦めたようにローに抱きついた。
『……今は無理』
黙って頭を預けてくるの、柔らかな髪を撫でるとほっとした。がそばにいてくれるだけで、心が安定していくのがわかる。
『このまま離したくない……』
『キャプテン、思ったこと全部口に出てるよ』
呆れて言われ、ローはしれっと言い返した。
『がいなくなって、ちょっとおかしくなってるんだよ』
チクリとやり返すと、は申し訳なさそうな顔をした。
『がいたらカナリアとも寝なかった』
『そ、それはわかんないもん』
『いいや、絶対してない。がいるのに他の女とベッドに行くわけないだろ』
がいないのが悪いのだ。みたらしだの団子だの、責められる方がおかしい。
それはローにとって当たり前のことなのに、腹の立つことには半信半疑だった。
『みんなにそういうこと言ってるくせに……』
『船長を信じろ』
『船長としてのキャプテンは信じてるけど……』
男としての信用はないらしい。可愛いけど可愛くないの頬をローはむにむに引っ張った。
『好きだって言ってるだろ』
『それとみたらしなのは別だもん』
『別じゃねぇ。……がいないと耐えられないんだよ』
このぬくもりも、匂いも、全部現実に持って帰りたい。どうしてそれがわからないんだろう。
二度と手放したくなくてぎゅっと抱きしめると、「ぅー」と小さくうめいてもローの背中に両腕を回した。
『キャプテン、あのね――』