第10章 お別れ
毎朝飽きもせずにキスすると、真っ赤になっては『それはルール違反』と低い声で言った。柔らかな体を抱いて『このまま二度寝したい』と本音をこぼすと、『ペンギンが朝ごはん作って待ってるよ』とはローの手を引いた。
『ごはんはみんなで食べなくちゃ』
寝不足は深夜まで起きていた自分のせいなので、頷いてローはベッドから起き出した。睡眠不足は午後に昼寝して取り戻そう。
『、忘れ物』
先に戻ろうとした彼女を引き止めてキスし、『今日も引っかかったな』とローは笑った。そんな日がずっと続くと思っていた。
『……?』
いつも真っ赤に怒って出ていくが、夢の中ではうつむいて黙り込んでいる。
どうしたんだろうとしゃがんで覗き込むと、ぷいっと横を向かれてしまった。
『? 何か怒ってるのか?』
まさかキスしたことを? そんなわけないとは思いつつ、不安で動悸がした。
『怒ってないもん。……キャプテンは女みたらしだからしょうがないんだもん』
なんか新しい単語が出てきた。
『なんだ、女みたらしって』
『女たらしの上級職』
『まず女たらしって職業じゃねぇだろ』
『キャプテンならそれで食べていけるよ。その気もないのに、ふらふら~って女の人が寄ってきて、気づけばベッドにいるんだよ』
『……カナリアのこと怒ってるのか?』
にはもう知られることもないと思ったから自暴自棄になっていた。まさかこんな形で責められるとは。
『乱暴されたあと、素敵な人に上書きしてもらいたいって思うのはしょうがないもん。キャプテンは色男だし、女みたらしだし、しょうがないの!』
しょうがないと言う割にの機嫌は悪かった。カナリアには怒ってないらしいが、ローは腹に据えかねるらしい。
丸いほっぺを膨らませているを膝に乗せてベッドに座りながら、ローはなんとか懐柔を試みた。
『ごめん。悪かった』
『……謝ってほしいわけじゃないもん』
『もうしない』
『カナリアみたいな可哀想な人を見捨てるの?』
何を言ってもお気に召さないらしい。ちょっと困って、ローは『好きだ』とささやいた。
『……それは反則』
『せっかく会えたんだから笑って欲しい』