第8章 やはりコイツはクソ女だ
声の主の方へ振り返ってみれば、その人物は、眉間にしわを作って、腕を組み、いかにも機嫌が悪そうに廊下の柱に寄りかかっていた。
なんとも、存在感のある空気を放って
いた。
「り、リヴァイ…」
ハンジが彼の名を呼ぶと、腕を組んでいた手を放し、ゆっくりと一歩ずつ、こちらの方へ歩いてきた。
ハンジとペトラに緊張が走る。
いつもは彼の前でものほほんとしているハンジでさえ、この時は生唾を飲み込んだ。
ペトラの額にはうっすらと光る水滴が浮かび上がっていたが、やがてそれも、頬を伝って流れ落ちた。
機嫌の悪い彼は二人の目の前に仁王立ちになると、再度、腕を組み、眉をひそめた。
「…おい、お前ら。何を勘違いしているのか知らねぇが、俺にはお前みたいなクソ女を抱く趣味はねぇ」
その言葉はハンジに向けられたものだった。
「…だ、だよね、……ふぅーー!もう、ペトラ!ビックリしたじゃんか!…って、リヴァイ、クソ女はひどくない!?」
そこにはいつもと同じやり取りがペトラの瞳にうつっていた。
ペトラはキョトンとして、頭の上にはてなマークを浮かべ続けていた。
「あーっ、よかった!危うく処女を棄てたのかと思ったよ。焦ったぁ!」
「…朝っぱらからてめえはろくな話しねえな」
「あっ!ごめん!気分悪くした?」
「……黙れ」
「もーっ、リヴァイー?何おこってんのぉ?」
「うるせえ…近寄るな……バカが移る」
「あっひどくない!?それ」
「てめえに酷いもクソもあるか」
「さっきからクソクソばっか言ってるよ」
「…………………(イラッ)」
二人は廊下のつづく道を横に肩を並べ、歩いていった。
ペトラはその様子を後ろからぼんやり見ていた。
すると、後ろから誰かに肩を軽く叩かれた。
振り返って見るとそこにはエルヴィンの姿が。
「だ、団長っ!」
「やぁペトラ。……納得いかないって顔をしているな」
「……………そうでしょうか」
「あぁ。リヴァイね、我慢したらしい」
「…えっ」
「薬はちゃんと効果があったんだ。しかしそんな状態でもリヴァイは我慢したんだ」