【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】
第2章 【千石】すべてせせらと笑ってやれ
キヨは少し海岸線を見つめたのち、私に向き合ってさっきのブーケを差し出した。
「はい、これはゆかりにあげる。ラッキーのお裾分けだよ」
「これ……」
黄色を基調として、差し色に咲き乱れるオレンジはキヨの髪色と同じだ。私が受け取ってしまっていいのだろうか。困っていると
「もーう俺みたいな男に引っ掛かっちゃダメだからね。幸せになるんだぞ」
寂しそうな表情を浮かべながら押し付けてきた。そのままこの場を去ろうとする大馬鹿野郎の背中に思わずブーケを投げ付けた。
「イテッ!? ちょ、ブーケをぞんざいに扱うのはバチあたりなんじゃ」
「バッカじゃないの!? こっちは10年も20年も前からあんたに引っ掛かってんだわ。なんで今頃ふらっと現れて消えようとしてんの? いい加減にしてよ!!」
「ゆかり……」
感情の高ぶりが雫となり目から流れ落ちる。ばつが悪そうな顔を浮かべ、キヨがこちらに歩み寄ってきた。その胸板をバンバン叩く。なんだか悔しくて。いつも翻弄されてばっかだ。