【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】
第1章 【仁王】ジョーカーのせいにして
初めてのキスはとろける砂糖菓子のように甘いものだとよく聞くが果たして本当にそうなのだろうか。私はいつだってその言葉を疑ってやまない。そして人生初めての彼氏がこの男だということにも未だに納得がいかずに首を傾げている始末だ。
「見すぎじゃ」
「あ……ごめん」
「まぁ別に悪い気はせんが」
ペテン師、仁王雅治。この男と付き合っていることは周りには言っていない。いや、言えるはずがない。騙されてるだの、あんなヤツのどこがいいんだだの、私は柳生くん派だのなんだのと言われるだけだ。
いや、私だって騙されてると思ってるし、丸井しか友達のいないような若干根暗なこんなヤツのどこがいいのかわからないし、私も柳生くんのような紳士の方がよっぽどタイプだ。
要するに何でこの男と付き合っているのか私にもわからないのだ。
でも付き合いはじめて何だかんだで今日で半年。別に恋人になったからといって特別なことをするわけでもなく、ただ私がクラス日誌を書いている傍で、私の前の席に座って窓の外を見つめて適当に雑談しているだけだ。
手を繋いだことも、抱き締められたことも、ましてや触れたことすらない。……ただの友達でいいじゃないか。なのに、何でこの男は"恋人"という関係を選んだのだろうか。
「お前のその後ろ姿をずっと追っかけとった。付き合ってくれんか」
……そういえば好きだって言われてないや。
告白のセリフも何が言いたいんだかよくわからないや。ああ、本当に何で私はこの男と付き合っているんだろうか。第一あの時、何で私はオッケーしたんだっけ。そもそも、何て返事したっけ? ……何も覚えてない。けど、すでに仁王とのこの時間を日常として受け入れている。