第2章 旅行篇。
①
事の発端は銀時が発した一言だった。
「なぁ、此れ商店街のくじ引きで当てたんだけど行かねぇか?」
と、夕飯を食べながら銀時が差し出してきたのは「2泊3日でいく温泉旅行の旅!」と書かれた用紙だった。
「いいけどよ…何時行くんだ?」
と十四郎が言うと、銀時はスケジュール長を片手に覗き込み、
「今週の土曜から月曜にかけて。祝日だろ?」
といった。確かに其の三日間は部活も仕事も無いため全員いける。
「んじゃ、決まり。」
そういって話を銀時が終わらせようとすると、神威と総悟が
「ちょっと待って。」
と引き止める。銀時がなんだよ、と箸を置くと神威が
「其れって何処の旅館?」
と訊いてきた。
「商店街のくじ引きなんてタカが知れてまさぁ。其の旅館、どれぐらいのもんなんですかぃ?」
と総悟がにやり、と笑いながら言った。雪乃は、少し気になってきたのか、銀時に
「其れ、なんていう名前?」
と訊ねた。すると、銀時は
「えーと…月夜館、だってよ。」
と旅館の名前を読み上げた。十四郎は携帯を片手に名前を調べる。其の周りに全員が集まる。
検索結果を見て全員が驚愕した。
「…幽霊の出る、旅館って出てるんだけど。」
と、雪乃が言うと
「「え、マジで…?」」
と引き攣った笑みを浮かべながら十四郎と銀時が言った。
「…当てちまったもんはしょうがねぇ。まず、行ってからだろ。」
と晋助はいい、雪乃を此方へと抱き寄せつつ
「大丈夫だ、幽霊なんてものに御前はわたさねぇから。」
といった。
「あ、抜け駆けずるいよ、晋兄!」
と晋助は神威に言われて手を離す。
「兎にも角にも、行くっきゃねぇだろな。」
全員が決意したように頷く。
そして、3日後坂田家一行は旅館へと出発したのであった。