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Dearest【降谷零夢】

第5章 離れても


幸紀が部屋を出て暫くすると、睦月さんと一緒に戻ってきた。

「降谷様、此方宜しければお召し上がり下さいませ。」
「ありがとうございます。様なんて付けなくて良いですよ。」
「いえ、愛様の大切なお方を軽々しく呼ぶなんて出来ません。」
「た、大切なお方って……!」
「ははっ。親友達にしか心を許さない彼女が君を家に住まわせてる時点でそう思うさ。」

自然と顔が熱くなる。
ふいっと顔を背ければ幸紀と睦月さんが笑う。
幸紀は笑うのを止めて真剣な表情をした。

「話は戻すけど、このままダラダラと残るつもりかな?」
「そんなつもりは……!」
「心配なのは分かる。だけど君には君の世界があるだろ?」
「……っ。」
「これ以上愛ちゃんに何かしない様に分家の方は俺が抑える……だから、もう帰るんだ。」
「幸紀様……降谷様……」
「愛ちゃんにもしっかり話すんだよ。」
「……幸紀様、口を挟む事をお許し下さい。降谷様にも整理するお時間が必要かと思われます。」
「……それは充分にあった筈だよ、ここに何回も来てるんだ。そろそろ愛ちゃんに感付かれてもおかしくはない。」

幸紀の言う通りだった。
俺は愛が出掛けてる合間に此処へ来ている。
たまに彼女より遅く戻る事だってある、恐らく気付いているのだろう。

「……今日、話す。」
「それが良い。この件に関しては2人の問題だから。」
「……降谷様、私は出来る事ならお2人が幸せになって下さればと思っております。」
「睦月さん……」
「それは引き留めてるのと一緒だから駄目だよ、睦月さん。」
「しかし……」
「ほら、さっさと愛ちゃん家に戻って話つけてきなよ。」

強引に俺を立たせて玄関へ向かわせる幸紀。
勿論、睦月さんが買ってきたお菓子を持たせるのを忘れない。

「……どこの世界にいようと、彼女だけでなく俺や睦月さんも君の味方だ。これだけは忘れないでくれよ、零。」
「……初めて名前呼んだな。」
「これが最後だろうからね。」
「……そうだろうな……」
「降谷様、どうかお元気で……。」
「はい、睦月さんも。」

2人に頭を下げて俺は愛のマンションに戻るべく葉月家を後にした。
自然と足は駆け足へと変わっていった。





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