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Dearest【降谷零夢】

第5章 離れても


ー俺の彼女になってくれますか?
ー……私で良ければ。

そう言葉を交わしたのはもう1週間くらい前だろうか。
そんな月日は経ってない筈なのに俺は記憶があやふやになってる。

「(おかしい……最近、やけに身体が怠くなる。)」

怠いだけじゃない。
汗の量が増えた、まるで此処へ来た時みたいに。

「……もう帰らなくちゃいけないのか。」

帰りたくないわけじゃない。
だけど、やっと彼女と気持ちが通じ合ったのに……まだ彼女の問題が終わったわけじゃないのに帰るわけにはいかない。
そう考えた俺は出来るだけ家でのシャワーを控えた。
だからと言って毎回、銭湯など行けるわけもないので幸紀に協力を求めたら葉月家の風呂を貸してくれる事に。

「降谷君……そろそろ覚悟決めた方が良いんじゃないか?」
「……分かってる。」
「そんなに愛ちゃんの事心配?」
「当たり前だろ、まだこの家と決着は着いてないんだ。」
「俺が何とかするって。」
「何とかって……元は幸紀がストーカー紛いの事をしなければ穏便に済んだんじゃないか?」
「え?そういう事言っちゃう??」
「あんな行動とった意味が分からない。」

頭を拭きながら俺は苦い顔をした。
当の本人は苦笑しながらも当時の気持ちを口にした。

「本当はあの子に苛々したんだ。」
「は?」
「あの子が当主になれば俺はこんな操り人形みたいにならなくて済んだのに。って思ってて無表情だけど親友達に守られてるのが気に食わなくてさ……その時は事情も何も知らなかったから、あんな嫌がらせみたいな行動とったんだよ。」
「……それで?」
「もう何もかも遅くて、今更仲良くなんてしてもらえないだろうなって。」
「さっき何とかするって言ってただろ?」
「何とかするさ。仲良くなれなくてもきちんと話だけはしないと。」
「はぁ……その辺りは俺からも話してみるよ。」
「悪いね。」

幸紀は俺に茶を出して笑う。
笑い方は少し愛に似てる気がした。

「(血は繋がってるわけじゃないし、一緒にいたわけでもないのに似てるなんて思うの変か……?)」
「そうだ、降谷君お菓子食べるかい?」
「お菓子?」
「降谷君が来る様になってから睦月さんがお茶請けにって買ってきたんだよ。」
「いや、風呂借りてるだけに……」
「遠慮しなくて良いって。ちょっと待っててな。」




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