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Dearest【降谷零夢】

第4章 接触


揺るがない瞳に降谷は溜息をついた。
正直な話、降谷からしたら葉月家より愛本人が大事だ。
彼女が壊れてしまう可能性があるのならそれは阻止すべきなのだろうか。

「……俺にそれを話してどうして欲しいんだ?」
「彼女と話す機会を作って欲しいんだよ。」
「それに頷くとでも?」
「君は頷くしかないよ。いつまでも一緒にはいられないんだから、その先を考えるだろ?」
「まぁ……」
「降谷君がいなくなったら、愛ちゃんはまた1人だ。親友の子達は必ずしも助けてあげられるわけじゃない。それにおじさん達が愛ちゃんを本当に愛していたんだと伝えたいんだ。」
「……気味悪く思ってたんじゃ?」
「話を聞いて君も疑問に思ったんじゃない?本当に気味悪く思ってたなら彼女に遺産なんか残さない、自分達が死ぬって分かってたから1人でも生きていける様に残したんだ。全てを相続させてしまったのは失敗だったけど。」
「失敗?」
「分家は遺産目当てというより、当主の証である指輪が欲しいんだよ。あ、もちろん遺産も欲しいんだろうけど。」

降谷は幸紀の指に嵌まっている指輪を見た。

「それ、じゃなくて?」
「これはレプリカさ。」
「レプリカ……そんなに指輪が大事なのか。」
「さっきも話したけど、当主の証だからずっと受け継がれてきたんだって聞いた。それを彼女が持っている事が気に食わないんだよ。」
「あえて能力のせいにして……」
「うん。」
「……そうか。」
「正直なところ、俺は愛ちゃんが当主になる気があるなら譲るつもりなんだ。」
「何で?」
「だって、元々この家の人間ではないし……当主の座なんていらないんだ。」

少し悲しそうに微笑む幸紀に降谷は言葉を詰まらせた。

「愛ちゃんが妹になるのは嬉しいんだけどね。」
「養子だったか?」
「そうだよ。赤ん坊の時に捨てられて親の顔も知らない。孤児院で育ったんだ。」
「こういった家系は養子をとるにしても孤児院とか行かなさそうな感じがするんだけど。」
「君には負けるけど一応、顔とか整ってるからね(笑)」
「容姿重視か。」
「そ。だから大変だったんだよ。当主にさせる為にありとあらゆる教養を叩き込まれて……」

当時を思い出したのか、遠い目をする。
それを見て降谷は苦笑いをした。
悪い奴ではなさそうだと思って。





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