第5章 暗雲低迷
父の会議の時刻が近づく。
紅茶を飲み干すと仕事に戻るだろう。
口につけていたカップを皿へと戻し
ゆっくりと立ち上がる。
長男の方を凝視。
いつもならそのまま扉へ向かうはずだ。
品定めされている気分になる。
父だけは。何を考えているか分からない。
「璃依は元気か」
「…、はい」
意表を突く。
長い指先は微動。
名前を聞くだけで強ばる表情。
頭の中で先日のことが鮮明に蘇る。
悲しげな瞳。
震える手。
虚無感に充ちた顔。
泣かせてしまった。
俺が欲に従って何も考えずに、手を出すから。
俺のせい。
あれから璃依の部屋に脚を踏み入れてない。
動揺するな、