第1章 1部
「間に合ったな」
「うん。…くしゅん!」
「おい大丈夫か? って服が濡れたままだな。おいどこかで雨宿りする場所探すぞ」
「分かった。くしゅん!」
「へーっくしょん!!」
濡れた服のまま二人で身を寄せ合い(この時は気付かなかったが、これはかなり恥ずかしい)雨宿りの為の場所を探すためガンメンを飛ばした。
「あそこ! 洞窟あった!」
「よっしゃ行くぜ!」
ガンメンはぎりぎり入れ無さそうだが、人間が入るのには余裕な洞窟を見つけ着陸する。
洞窟内に人や獣の気配は無かった。風で運ばれたのか枯れた枝が豊富にあったので火を点け焚き火をすることにした。
「何とか人心地ついたな」
焚き火の脇にどっかりと座り、カミナが溜め息を吐く。
少しでも乾かそうと、私は立ったまま服の裾を焚き火の前でぱたぱたと仰いだ。
「そろそろ夕方だよね。雨止むかな」
「どうだろうな」
洞窟から見える土砂降りの外を二人で眺める。
「ま、のんびり待つさ」
カミナが欠伸をして横になった。目線で私を見上げそのまま目を瞑る。
「…寝る?」
「おう。…ところで」
「何?」
「見えてんぞ」
「は? …えっ、ええっ!?」
慌てて服の裾を押さえつける私に目を瞑ったままにやりと笑って、カミナは鼾を掻き始めた。
「…もう」
すぐに眠ってしまったカミナに怒る気力も無くなり、私も座り込み膝を抱えた。
外をちらりと見て思う。この場所は知っている。
ここはニアが居た姫捨て谷のすぐ側だ。
雨は嫌いだ。
あの一年前を思い出す。
特にこの場所。一年前のあの日からこの場所まで雨はずっと降り続いていた。
太陽を隠す雲と雨は、私達から太陽の様なひとを奪って行った日を思い出してしまい、ぶるりと身震いをする。
「…う」
一度思い出すと体の震えは止まらなかった。
「…大丈夫」
自分に言い聞かせる。カミナは居る、目の前に。
でもその事と一年前の現実は全く別の感情だった。
「大丈夫…寝よう」
カミナに倣い目を瞑った。目を開けた時には雨が止んでいますように。