第4章 過去………そして未来へ
しばらくすると、木村さんが言った通り、ちゃんがオアシスに来た。
拓哉「急に呼び出してごめん」
「いえ、大丈夫です。ちょっと木村さんに聞いて欲しい事もあったんで………」
そう言うとちゃんは笑った。
俺は扉の隙間から、そっとちゃんを見た。
少し痩せた感じのちゃん。
ちゃんはミルクティーをひと口飲むと、ふーとひと息ついた。
「木村さんが入れてくれるミルクティーって、どうしてこんなに落ち着く味なんですか?」
拓哉「それは、俺の愛情がたっぷり入ってるから♡」
お互いの顔を見てクスっと笑う、木村さんとちゃん。
拓哉「それで聞いて欲しい事って?」
木村さんが優しく問いかけると、ちゃんは少し俯き話し始めた。
「私………わからなくて………」
拓哉「何を?」
ちゃんは、あの日の出来事を話した。
「あの時は、正直怖かったです」
オレの心臓がドキン!!と鳴った。
やっぱりちゃんに嫌われたんだ…………
「でも………」
拓哉「でも?」
俯いた顔を上げ、ちゃんは真っ直ぐ木村さんを見た。
「今まで見たことない太輔くんの姿………そして赤く光る目………突然の事で怖いと思ったけど、それよりも私を見つめる悲しそうな太輔の顔が忘れられないんです」
えっ?
俺はゴクリと唾を飲み込み、ちゃんの次の言葉を待った。
「私が怖がって逃げたせいで、太輔くんを悲しませてしまった。それがずっと気になって、連絡する事もできなかった。それと同時に、私の太輔くんに対する気持ちもわからなくなったんです」
拓哉「前に藤ヶ谷が好きだけど、今の関係を壊したくないから告白しないって言ってたよね?」
「はい」
拓哉「あの時と今では、気持ちが違ってきてるとか?」
「正直わかりません。木村さん、本当の太輔くんはどっちなんですか?」
拓哉「本当の藤ヶ谷かぁ………俺はどっちも本当の藤ヶ谷だと思う」
「どっちも………ですか………」