第11章 勧誘
冬華は後ろから感じる気配に気づくと、方向を変えて裏路地へと入っていった。そして
「……私に何か用かしら」
相手にそう問いかけると___
「やはり気づかれてたか」
相手はそう答えると姿を表した。
「見たことないわね。あなた誰?」
相手は紫がかかった黒髪にメガネをかけている、自分と同じくらいの歳の青年だ。白のスーツを着ており謎の紋章が描かれた辛いグローブをはめている。
「私はラグナレクの第一挙豪、オーディーン。」
「ラグナレク、噂に聞いたことあるわ。精鋭揃いの不良集団だと。そんな方が私に何の用かしら。」
「私は強い人が好きだ。間宮冬華、君が優れた武術家だという情報がラグナレクまで入ってきた。君をぜひ、ラグナレクの一員として迎えたいと思っている。」
「なるほど、勧誘ってわけね。せっかくのお誘いだけれど、お断りするわ。私は武術は好きだけど、喧嘩には興味ないからね」
「そうか、それは残念だ。だが君のよく知る彼は最近、ラグナレクに新しく入ったようだ。」
「……それってまさか、夏のこと?」
「そうだ、ハーミットこと谷本夏。彼は新人ながら大した腕前でね。すぐに幹部まで上り詰め挙豪入りしたさ。」
「夏……どうして。」
冬華は信じられないと思っていたがすぐに考えが変わった。
(いや、ありえない話ではないのかも。私に勝った夏は、さらに強さを求めてラグナレクへと…)
冬華はしばらくその場で考えていると
「今回は身を引くが、私はいつでも君のことを歓迎している。気が変わったならいつでも教えてくれ。」
そう言ってオーディーンは姿を消した。
冬華はその場で考え続けていた。
ずっと待ってた人がラグナレクに。ラグナレクに入ったら夏に会える。だが……
(追いかけたい気持ちは山々だけど、私は夏が帰ってくるのを待つって決めたんだ。それに、今の私の力じゃ夏のことを助けられない)
冬華は夏を追いかけないと決めると歩きだし、家へと向かっていった。