第10章 別れ
試合はほぼ互角のように見えた、だが、、
___シュッ
「ック」
押されていたのは冬華だった。
(やっぱり夏、前より確実に強くなってる。だけど私にも武術家としてのプライドがある。絶対に負けられない!!)
冬華はそう思いながら必死で攻撃を繰り広げる、だが…
「ッハァア!」
「キャァー!」
ドサッ
冬華は倒された。ついに夏は冬華の実力を上回ったのだ。
「あーあ。負けちゃった。いつか追いついてくるとは思ってたけど、もう追いつかれちゃったか、悔しい!」
冬華はそう言って立ち上がる。
「ふん、いつまでも負けていられないからな」
そう言うと夏は裏路地を去っていった。すれ違うときに見た彼の目は、とても冷たかった。
「……夏。ほんとにどうしたんだろう。」
まるで出会った頃に戻ったみたいだ。せっかく時間をかけて縮めた距離が、振り出しに戻ったような気がした。共に過ごすにつれ見えた彼の素顔が、また見えなくなってしまった。