第3章 バーボン
「そういえば……」
「なに?」
「女子高生の嫉妬以外にも、貴女にはポアロに来て欲しくない理由があるんですよ」
バーボンは思い出したように立ち上がり、パソコンの置いてあるデスクの引き出しを引いて一枚の写真をテーブルに差し出した。
写っていたのは、見覚えのあるメガネの少年だった。
確かにこの少年は、私がポアロを出た後に遭遇したコナン君だ。
バーボンも目をつけているってことは、あの胡散臭さはやっぱり気のせいじゃないってこと?
「江戸川コナン。彼とは迂闊に接触して欲しくないので」
「……」
いや、もうとっくに接触しちゃったよ。
しかも忘れてたけど、疑いたくなるような言動とられたし、多分なにかも取られたし……。
とは敢えて言わずに、話を続けてもらう。
私にとってもコナン君を知るチャンスだし。
「こんな小さな子が何かあるの?」
「小学生ながらに、普通の大人の何倍も頭の切れる子です。只者でないのは確かかと……」
只者ではないのは、私も理解できる。
でも理解してしまうほどにあの時コナン君が私からとった何かが、より重要なものだったように思えてきてしまう。
本当に、何を取った?
あの時昴という男を気にせずに、ポケットに手を入れていれば……。
「常連なの?」
「というか、上に住んでるんですよ。毛利探偵のところの居候なんです」
なるほど、だから上から降りてきたのか……。
ていうかそれ凄い厄介じゃん。
せっかくハムサンド気に入ったから、また食べに行こうとしてたのに。
ん……?
でもさ、これであの時取ったものを問い詰めることが出来るって考えたら、逆にチャンスを得たってことなんじゃない?
いくら頭の切れる子だからって、私達の関係する犯罪組織なんて知るわけもないし。
せいぜい子供に対する良心を持ち合わせない、意地悪なお姉さんぐらいしか思われない気がする。