第2章 The last scene
「ショーター」
「ん?」
「ここ、まだ痛い?」
「これ?全然痛くねえけど・・・。それって今聞くこと?」
の首筋に埋めていた顔を上げながら、思わずツッコミを入れた。
白くて華奢な人差し指が、薄く色付いた左肩の傷痕をそっとなぞっていた。
微妙な力加減で触れられているくすぐったさと、ほんの少しの扇情。
にはそんなつもりは毛頭無いとは思うけど。
「ごめん、でも包帯取れたあともずっと気になってて」
長い睫毛がゆっくりと、二度瞬きをした。
その髪と同じ、透き通るようなプラチナブロンド。
上下の睫毛に縁取られた碧眼。
まるで作り物のような美しさに思わず息を飲み、なおも心配そうに傷痕を見つめるの様子に、仕方なく記憶をたどった。
しかし困ったことに、もう、いつ撃たれたんだかもはっきりと思い出せない。
撃たれたことより、めちゃくちゃ気に入ってたタンクトップが血で染まってダメになったのがショックだったんだよなあ。
そう笑いながら言うと、それまで心配そうに揺れていた大きな瞳が、唖然としてこちらを見つめた。
「・・・・・・・・・」
あ、そのちょっと呆れたような表情もそそるなぁ。
・・・つーか今、大切な夜の営みの最中なんだけど。
傷痕なんかどうでもいいから、そっちに集中してくんねぇかなあ・・・
どうやって元のムードに戻そうかと頬をぽりぽり掻いていると、細い腕が伸びてきて、頭をぎゅう、と抱きすくめられた。
何も言わず、剃りあげた部分をしょりしょりと撫でられる。
「?」
危うく全体重をの身体にかけそうになって、肘で自分の身体を支えた。
おでこに柔らかい感触。
いとおしむように、何度も繰り返し落とされるキス。
「・・・・・・」
は何も言わないけれど、考えていることは何となく分かる。
無茶なことはしないで。
危険な場所へは行かないで。
だいたいそのあたりだろう。
けれど、は絶対に口に出したりはしない。
泣いて縋られれば、俺はきっと、いとも簡単に揺らぐだろう。
そしてきっと、そのことをは誰よりもよく分かっている。