第4章 Sunshine
普段からベラベラとよく喋る人間は、こういった沈黙に我慢ができない。
正直な気持ちを述べているだけなのに、どんどん墓穴を掘っている気がする。
そしてやっぱり、彼女からはなんの返事もない。
ただひたすら、視線のみを感じる。
さすがはアイスドール。
ここまでつれないとなるとナンパじゃなくても心折れるな。
というか恐らくは彼女のスケッチの定位置であろう場所で勝手に寝てた俺が悪いんだろうけど。
よし、さっさと退散しよう。
つーか最初からそうすりゃ良かったんだ。
「あー、その、邪魔して悪かったなぁ。パラソル返すぜ」
内心ビミョーに傷ついてはいたが、務めて明るくそう言って、俺は立ち上がる。
もちろん返事はないがもう特に気にはならない。
ハシゴを降りようとすると、蚊のなくような声が背中を追ってきた。
「あ・・・・・・・・・ありがと・・・」
「!」
しゃがんでハシゴに手をかけようとしていた俺は、危うく手を滑らせそうになった。
今、かすれた声で、ありがとうって聞こえたよな?
身体ごと彼女の方を振り向く。
じっ、と、ふたつの瞳がこちらを見据えていた。
「・・・今、なんて?」
思わず聞き返さずにはいられなかった。
さっきのはどうやら幻聴ではなかったようで、彼女はもう一度、今度はハッキリと言った。
「褒めてくれて、ありがとう」
そこに笑顔はなかったけど、少しだけ・・・ほんの少しだけはにかんでいるように見えた。
俺の気のせいかも知れないが。
屋上で聞く彼女の声は、意外にも柔らかく、そして優しかった。