第14章 まだ
「キミからテオの匂いがするんだけど。」
私の目線よりも高い位置からアーサーの声が降ってくる。
そのまま少し姿勢を屈め、首筋に顔を近づけられる。
「テオの匂いと、キミの汗の匂いが混じってる。」
「っ…、アーサー、近い…」
私の首元でアーサーが呟く。突然縮められた距離に心が揺らぐ。
触れたい。
「ねぇ、テオに抱かれたの?」
そんな私の言葉を無視して、少し強い口調でアーサーに問われる。
「なんでそんなことっ…」
「答えて。キミはテオに抱かれたの?」
誤魔化すな。まるでそう言ってるような口調で更に強く問われる。
問いというよりも、尋問のような…初めて見るアーサーの姿。
彼の細められた瞳が私を見詰め、自分の不誠実さに吐き気がした。
「………はい。」
たっぷりの沈黙のあと、小さく答える。
「ふーん?テオのことは受け入れられたんだ?
俺の時はあんなに嫌がったクセに。」
そう呟くアーサー。嫌だ、嫌われたくない…
「私、本当はっ…!」
アーサーに抱かれたかったの。そう言えたらどれ程楽か。
「とにかく、テオさんとそう…なってしまったのは私が誘ったから…それ以上は聞かないで…」
「ふーん。テオのことは庇うんだ?そんなにヨかったの?」
挑発的なアーサーに尚も問いただされる。
「アーサー!もうやめてってば!」
思わず大きな声を出してしまう。
とにかく、それ以上自分の行いを掘り返して欲しくない。
特にアーサーには。
「ごめんっ…あの、でも本当に…これ以上聞かないで欲しいの。」
苦しげに呟く私の様子を見て、アーサーはますます瞳を細める。
「ナニソレ。そんなの…本気ですって言ってるようなものじゃん。
俺は認めない。」
アーサーが言い終わるや否や、私に唇を近づけて来る。
ダメ。それをされると貴方への気持ちを隠せなくなる。
思わず顔を背けると、アーサーの顔が苦しそうに歪められ、そのまま頰を掴まれた
「んんっ!」
強引に唇を重ねられる。
強く閉じられた私の唇を無理矢理開き、アーサーの舌が入ってくる。