第14章 まだ
どうしよう、どうしよう…
私の隣で眠ったテオさんを見つめながら考える。
アーサーの代わりに…別の人に抱いてもらうなんて。
「私…なんてことを……」
誰かに懺悔したくて堪らなかった。
見ると、ベッドの脇に‘彼’の灰を見付ける。
その灰を握りしめる。
「ごめんなさい…貴方のことっ…私、違う人を愛して…」
そのまま静かに涙を流す。
泣く資格なんてない。
私、なんて不誠実で汚いのだろう。
テオさんにもアーサーにも不誠実だ。
力の入らない腰を無理矢理起こし、床に落とした服を身につける
そのままよろよろと扉を開き、テオさんの部屋から出た。
「あっ」
扉を開けると、ちょうど前を通りかかったのであろうアーサーと鉢合わせる。最悪のタイミングだ。
「アーサー…」
アーサーはテオさんの部屋から出てきた私を驚いた顔で見ている。
「テオと一緒に居たの…?」
「…はい」
2人の間に沈黙が落ちる。
「そっか、俺はちょうどキミの部屋に向かって居たんだ。キミとちゃんと話がしたくて。」
「そ、なんだ…」
また沈黙。
「あっ、そーだ。アナスタシア食事がまだだったよね?…食べる?」
アーサーが気まずい空気を変えるように明るい口調で尋ねてくれる。
食事…は、必要無い。何故ならテオさんので満たされているから。
「えっと…今日は大丈夫かも。」
「そっか…。テオに貰った?」
「えっ…」
すぐに答えられず目を泳がせてしまう。
「……。」
目を伏せていると
「ねー、テオにもあげたの?…キミの血。」
「血はあげてないと思う。…多分。」
「たぶん?」
「うん、気が付いたらテオさんと一緒に眠っていたから…」
私のこと、軽蔑して。
「だからはっきりとはわからないけれど。」そう伝えると、アーサーの瞳が揺れる。
「一緒に眠っていたの?テオと。」
その声は怒りを含んでいるようで…私の胸は締め付けられる。
そのままアーサーは私の全身を見つめる。
「ねー、どーしてそんなに乱れてるの?…キミの服。
それに髪も。」
「え…?」
そしてそのまま一歩、近付かれる。
私とアーサーは触れてしまいそうなほどの至近距離でお互いに見つめ合う。
その近い距離に、今すぐ触れたいという気持ちが強くなる。