第12章 12
アーサーはモテる。らしい。
人間の女の子と一緒に居た頃は、寄ってくる子にはっきりと「この子が居るから。」と断っていたらしくて…
それでも、何十年も過ぎた今はまた沢山女の子が寄ってくると聞いた。アーサーは断っているみたいだけど、近付いてくる子にとっては「本命が居ないのにどうして?」という感じで、懲りる様子が無いらしい。
アーサーにとって本命は‘人間の彼女’しか有り得ないのに…
そんな話をテオさんから聞いて、街へ行くなら一緒に歩く私も少なからず注目されると思うし…あんまりおかしな格好をするとアーサーに恥をかかせるし…そう思って悩んでいた。
「どうして?キミみたいな綺麗な子、なかなか居ないのに?」
不思議そうに呟くアーサー。
「っ…急にやめてよねっ…!そういうことじゃないの!
とにかく、私のせいで貴方の評価が悪くなるのは嫌。」
「んー?評価とか、よくわからないけれど…
キミは何を着てもきっと綺麗だよ?まあ、俺の好みに合わせてくれるならー……あ、そのブルーのワンピースがイイなー」
アーサーが指差したのは、青いお花の装飾がされた綺麗なブルーのワンピースだった。
「わかった。これにする。アーサーは青が好きなの?」
「まあね。ホラ、青色って俺の目の色と同じだし。俺の色の服を着てくれるのって、なんかイイよねー」
確かに、このワンピースの綺麗な青はアーサーの瞳の青とよく似ていた。
「そうなんだ。確かにアーサーの目は綺麗な青だよね。
このワンピースも似てる。貴方の瞳の色、私も好きだよ。」
にっこり微笑みながら伝えると、アーサーの頰が少しピンクになる。
「アーサー?どうかした?」
「キミってほんとやだー…もーなに?自覚ナシとかー…」
「や、やだって…ごめんなさいアーサー、何か気に触ることを言ったなら謝るから…」
やだ、と言われたことに少し傷付いてしまう。
「そーいうことじゃナイ。もー…俺だってキミの瞳綺麗だと思うよ。綺麗なローズピンクで。」
「ほんと?ありがとう。じゃあ、着替えるから少し待ってて。」
……
着替えに行った彼女の背を見ながらアーサーが小さく呟く。
「なーんか、俺ばっかり意識してるみたい…」
その顔は、アナスタシアの瞳と同じローズピンクに染まっていた。