第12章 12
それから暫く
私はこれまで通り皆さんのお手伝いで忙しく過ごした。
ただ…少し変わったこと。
アーサーと過ごす日が増えたこと。
彼の灰を持ち歩く回数が減ったこと…
……
今日はアーサーから、一緒に街へ行こうと誘われている。
「お屋敷の外へ出るの、久しぶりだなぁ…」
あの夜から…基本的に皆さんのお手伝いをするのはお屋敷の中だけになっていた。
広いお屋敷で、広いお庭もあって…
飽きることはなかった。
だから私が外へ出るのはあの怖い夜以来の事
随分久しぶりで、不安よりもわくわくした気持ちが強い。
「どんな格好で行こう…」
伯爵が用意してくれたドレスやワンピース、靴に装飾品はかなりの数で、このお屋敷へ来てから数ヶ月経つ今でもまだ袖を通していないのが大半だ。
「赤…は違うかな?黒…?暗いかな…ピンク…はなんだか恥ずかしい…」
数十着の洋服と睨めっこしていると…
「こんこん、入るよー」
ガチャリと扉が開き、アーサーが入ってくる。
「あれー?ちょっと早かったー?」
キョトンとした表情のアーサー。
「アーサー!ちゃんとノックをしてっ!」
「ごめんごめん、早くキミに会いたくて。
それよりも…」
いつも通りの軽い話し方。最初の頃は少しだけびっくりしたけれど、もう慣れたものだ。
そのアーサーの視線が私の足元に散乱した洋服に注がれる。
「っ!これは、あの…伯爵があんまり沢山プレゼントしてくれたから…ちょっと迷って…!」
わくわくしていたことがバレるのがなんとなく恥ずかしくて早口で喋る。
「ふぅーん?俺の好みがどんなのーかなー?って、悩んでくれたの?」
アーサーが意地悪な表情で微笑む。
「違うよ!久しぶりに外へ行くからわくわくして…それでどんな格好がいいかな…って」
そこまで言って、気がつく。墓穴を掘ったこと。
「あっ!ち、違うっ!だから、あの…」
慌てて言い訳を考えるけど…思いつかなくて黙り込んでしまう。
そんな私を楽しそうに見つめながらアーサーが
「俺と出掛けるの、楽しみだったの?かーわいー」
観念した私は、アーサーに助けを求める
「うん…でも、沢山あってよくわからなくて…
最近の流行とかも…わからないし…変な格好をしてアーサーに恥をかかせたくないし…」
真っ赤な顔で呟く。