第2章 2
「はっ…はぁ…」
腕の痛みが強くなってきた。
私の右腕は二の腕の肉をちぎられただけで済んでいた。
「優しい子…これだけじゃ足りるはずないのに…」
血が流れ続けて体温が下がる。
もちろんこのくらいじゃ死ぬことも無いけれど
しばらく動くことは出来なさそう。
「力が入らない…小瓶も握れなくなってきた…少し、休まないと…」
先程足を引っ掛けた木に寄りかかる。
「ごめんね、ちゃんと埋めるから…少しだけ休むね…」
わたしは小瓶を胸元に仕舞い、そのまま意識を手放した。
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「あのおじさん、この辺りで見たって言ってたよねー」
「ああ…それにしても昼間なのに薄暗いな…」
「そーだね。こーんな暗い森に女の子が1人で居るかもしれないなんて…ちょーっと心配だねー。」
「居たとしてもとても無事だとは思えないな。」
……
「おいアーサー…人の気配が全く無いが…
手掛かりとやらは見つかったか?」
「そーだねー、ここに誰か居たのは間違いないよ。
ほら、まだ新しい足跡が付いてる。」
アーサーは地面を調べていた。
「足跡以外は?」
「うーん、今のところナイかなー。足跡を追ってみたほうが良さそうだね。」
……
「おいアーサー…」
「うん、わかってる。血の匂いがするね…それに足音もする…」
ガルルルルル…
「野犬か!?」
「テオ!あの野犬、口の周りに血がついてる。」
「まじかよ…遅かったか…とにかく逃げるぞ!」
テオが走り出そうとすると、アーサーがそれを制する。
「テオ、待って。」
「なんだ?」
アーサーが野犬を見つめながら答える。
「んー、なんかあの子…俺らのこと襲うつもりは無いみたいだよ?
てゆーか、付いてきてって言ってる気がするー。」
「はぁ?なんだそれ。おい、アーサー!?」
………
「血の匂いが濃くなってきたね…」
「…ああ。嫌な予感がするな。」
大木の下に人影のようなものが見える。
「テオ、あれ…」
「人がいるな。」
人影に近づいたテオは驚きの声をあげる。
「これは…もうだめだな。血を流しすぎだ。」
木の根元に寄りかかるように目を閉じている少女は大量の血を流し地面の土を黒く染めていた。
「すごい血の匂いだね…クラクラする。」