第11章 11
「そう、なんだ…」
ドキドキして上手く呼吸が出来ない。
瞼に優しく触れるアーサーの唇がくすぐったくて、少し身をよじる。
「アーサー、くすぐったいよ」
でも…私の小さな抵抗はちっとも抵抗になっていない。
不意に、アーサーの瞳が私の瞳を覗き込んだ。
「あれあれ、アナスタシア…俺はただおまじないをしているだけなのに…そんなに真っ赤な顔して…どうしたの?」
アーサーはわざとらしく首を傾げて見せる。
「気のせいじゃない…?」
やっぱり顔、赤いんだ。恥ずかしい。
「えー?そうかな?顔だけじゃなくて、耳まで真っ赤。
ほーんと食べちゃいたいよね〜」
そのまま耳元で囁かれ、ますます顔に熱が集まるのを感じながら
やっとのことで紡ぎ出す。
「食べちゃダメ…」
私の声は、恥ずかしくなるほど甘かった。
「あーあ、ジョーダンだったんだけど。そーんな可愛い声で抵抗されると…俺本気になっちゃうじゃん。」
いつも思うけど、こういう時のアーサーはずるい。
「なんかアーサー意地悪だよ…」
私は真っ赤な顔のままアーサーを見つめる。抗議のつもりだったんだけど…
「そんな潤んだ瞳で…上目遣いで…キミは俺をどうしたいの?」
アーサーが目を細める。
「ねぇ…俺だってキミが危険な目に遭ってるかもって思ったらすごく怖かったんだよ。
案の定全身傷だらけだし、キミを助けられたと思ったら気を失っちゃうし…」
アーサーの表情は真剣で
どこか苦しそうで
ああ、私は…この人をとても不安にしてしまった。
こんなにも私のことを思ってくれている彼に苦しい思いをさせてしまったんだ…
この人のことも…抱きしめてあげたい。もう大丈夫だよ、と安心させてあげたい。
「アーサー、おいで…?」
私は両腕をいっぱいに広げる
「えっ…?」
アーサーが戸惑いの表情を浮かべる。
「アーサーのこと、抱きしめさせて…?」
私が再び腕を広げると
「っ…」
ぎゅうっと私の背中にアーサーの腕が回され
そのまま強く強く抱きしめ合う。