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落花

第11章 11





ひとしきり泣いたあとは、アーサーが私の髪を優しく撫でてくれた。


私はアーサーの胸に顔を埋めながら撫でられる手の心地よさに身を任せる。



腫れた頰や付けられたキズはまだ痛むけれど、先程まで感じていた恐怖は随分と薄れていた。


私はアーサーの胸にグリグリと頭を押しつけながら呟く。


「アーサーのシャツ…ぐしょぐしょになっちゃった…ごめんなさい…」


「いーよ、そんなの気にしなくて。」


アーサーは私の髪を撫でながら答える。


落ち着くと、途端に恥ずかしさが込み上げてくる。


「良くは、ないと思います…」

なんとなく敬語になってしまう。


「なーに?急に敬語なんて使ってー」


アーサーが笑っている気配がする。


「別になんでもないっ…!」

恥ずかしくて、勢いに任せて胸元から頭を離す。


「あれー?もうかわいーキミはお終い?」


アーサーは撫でる手を止めて目を丸くする。

バッチリ目が合う。


今の私、泣き腫らしてるのに…!


「み、見ないでっ…!」

慌てて目を手で覆う。きっとひどい顔をしていると思う。恥ずかしい。


「ちょっとちょっとー、なんで顔隠すの?」


アーサーに問いかけられる。


「だって………恥ずかしい……」

小さな声で返答した。


「ふーん?俺としてはもっと甘えてくれてイイんだけどなー。」


その言葉に、指の隙間からチラッとアーサーを見つめる。


「でも、私いまひどい顔してるから…アーサーに見せるのは、なんだか恥ずかしくて嫌かも…」


顔を覆ったまま呟く。隙間から覗く私の目とアーサーの綺麗な瞳の視線がぶつかる。


「ひぁっ…!」

びっくりして変な声を上げてしまった。


「ねー…なーに、今の可愛い声。」


「なんでもない…!」


「えー?何でもないワケ無いでしょー?ね、顔隠さないで。
俺に甘えるって言ったでしょ?」



「う…」

私は仕方なく顔を覆っていた手を外す。


「あんまり見ないで…」

真っ赤な顔で俯いていると、アーサーの唇が私の泣き腫らした瞼に優しく触れる。


ちゅ…


「ひゃっ…な、何を…」


驚いてアタフタする私を見て、アーサーは意地悪な微笑みを浮かべる。


「んー?早く治りますよーにっていうおまじない?」







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