第10章 10
アーサー
俺たちが闇オークションの会場を見つけ出し、仮面を付け伯爵の名前で中へ入るとまさに今アナスタシアの値段を付けているところだった。
アナスタシアは手足を拘束され、観客に顔を見せるため司会の男に髪を掴まれ上を向かされていた。
その頰は、殴られたのか痛々しく腫れている。
そして彼女は涙を流していた。
「っ!アナスタシア…」
一瞬で頭に血がのぼる。冷静な判断が出来ない。
今すぐ彼女をあの場所から救い出したい。
思わず身を乗り出した俺を、伯爵は素早く制する。
伯爵「アーサー、気持ちはわかる。けれど今は我慢してくれ。」
そう呟く伯爵の表情も強張り、俺を制する手は怒りで震えていた。
ナポレオンとジャンヌが警察に連絡をしている。
早く
彼女を早く助けたい。
会場の観客がアナスタシアの頰が腫れていることに文句を言う。
観客「初めて殴るのは主人の役目だろ!?」
耐えろ。
司会「申し訳ありません、少し躾を…」
「っ!」
今度は耐えられなかった。
気がつくと俺は観客席を飛び越えて彼女の元へ向かっていた。
司会「な、なんだおまえは!?」
突然客席から飛び出した俺に司会が驚くのと
警察「おい、動くな!」
ホールの扉を開けて複数の警官が入ってくるのは同時だった。
会場は一瞬でパニックになる。
俺は仮面を外し床に座り込んでいるアナスタシアを抱きかかえる。
「アーサ「もう大丈夫。安心して。ここから逃げよう。」
アナスタシアの頰が腫れている。唇の端からも血が出ている。
俺が彼女を抱きかかえると、安心したのか表情が少し和らぐ。
「ありがとう…」
「ん、お屋敷へ帰ろう…」
少しだけ彼女が微笑む。そして、俺の腕に抱かれたまま気を失ってしまった。