第10章 10
アナスタシア
冷たくて硬い床。
絶え間なく聞こえる泣き声と呻き声。
ここは…?
眼を覚ますと、硬い鉄格子に囲まれている。 そして私の手足は自由を奪われている。
「ごほっ…」
息を吸うとみぞおちの辺りが痛む。意識を失う前に強く殴られたことを思い出した。
きっと、酷いアザが出来てる…
手足だって、強く結ばれて赤くなっている。
縄抜けをしようと頑張ってみたけれど隙が全く無い。私の皮膚が擦り剥ける鈍い痛みを感じる。
辺りを見回すけれど、私の入れられた檻は一際頑丈で鍵も見当たらない。他の檻は人が数人入れられているのに、私は一人きり。
不意に遠くの扉が開き檻から乱暴に人が引きずり出される。
その時、一際泣き声が大きくなる。神に祈る声も聞こえる。
いったいこれは何が起きているの…?この人達はどうなるの…
そんな光景を何度も何度も繰り返し、ついにこの暗い物置のような場所には私の他誰も居なくなる。
私の檻の前に大きな男。ああ、この人が私を殴った人。
檻の鍵が乱暴に開かれる。
?「来い、お前の出番だ。今日の目玉商品だ。」
男はまたあの下卑た笑いを浮かべる。
「私をどうするつもりですか…?」
声を絞り出して問い掛ける。
?「お前はこれからお金持ちの貴族にオモチャのように扱われるんだ。綺麗な顔が苦痛に歪むのを見るのが好きな変態野郎に買われるんだ。せめて優しい貴族に買われるよう神に祈るんだな。」
身体が冷たい。
何を、言ってるの?
「いや!私は商品じゃないわ。ここから出して!」
下卑た笑いの男を睨み付ける。
?「威勢が良いな。目玉商品だからって丁寧に扱ってもらえると思うなよ。そうだ、少し価値は下がるがその綺麗な顔にアザを付けてやろう。そういうのが好きな貴族も居るからなぁ!」
言い終わるや否や、男は私の頬を殴る。
「っ…!」口の中が切れて、血の味が広がる。
?「どうした?さっきまでの威勢はどこへ行った?怖いか?怖いなら泣いてもいいぞ。誰も助けてくれないけどなぁ!」
もう一度頰を殴られる。
?「喚かれると面倒だ。口を塞ぐぞ。」
そして私の口は話せないように塞がれる。
?「いい顔になったなぁ!行くぞ、出番だ」