第10章 10
パリの中心部まで馬車を飛ばす
ちょうど大通りへ到着した時、後から来たテオが追いつく。
「アナスタシアと別れたのはこの辺り?」
テオ「ああそうだ。裏通りはこっちだ。あいつは今日選んだ絵を入れたキャンバスバックを持っていた。念のため聞き込みもするぞ。見かけた奴が居るかも知れん。」
急いで駆け出そうとするテオを呼び止める。
「テオ、ストップ。もしかしてあの大雨はアナスタシアと別れてすぐに降り出した?」
テオ「ああ、小雨だったのが急に土砂降りになった。」
「そう。テオ、アナスタシアは傘を持っていた?」
テオ「傘なら俺が朝持たせた。」
「でもあの振り方じゃ傘なんてほとんど意味が無かったかも。アナスタシアは絵を持っていたんだよね?きっと濡らさないように屋内に避難しようと思うはず。馬車はきっと渋滞だっただろうし、雨足が弱まるまで何処かで雨宿りをしようと考えると思う。」
テオ「それで裏通りに入り込んでしまったって訳か?」
「恐らくね。それに彼女は迷い込んだ裏路地で一人不安だった筈。だからきっと人の居そうなところへ向かうはず。例えば酒場とか、カジノとか…」
テオ「この辺りのカジノや酒場はある程度固まっているんだ。そこを一軒一軒探すぞ」
テオと二人で手分けして探そうとしてきた時、伯爵が馬車で追いついてきた。
伯爵「2人とも待ちたまえ、気になる噂を耳にした。今晩ここの裏通りの地下にあるホールで闇オークションが開催されるらしい。そして、今晩の目玉商品の女が見張りの目を盗んで逃げ出したそうだ。このオークションはかなりの規模のものらしく、目玉商品を逃がすなんてあってはならないだろう。だからきっと…」
「きっと、代わりの女の子を探すはず。目玉商品ってくらいだから、見た目も綺麗で珍しい子を探しているはず。
ねぇ、この条件…アナスタシアに当てはまるよね。」
俺たち3人は息を飲む。
彼女の綺麗な顔、ローズピンクの珍しい瞳…透き通るほど白い肌。
綺麗で珍しい目玉商品、の文言にぴったりと当てはまる。
「その会場に向かおう。早くしないと手遅れになる。」