第10章 10
結局ロクに集中出来ないまま夜になる。
そろそろテオとアナスタシアが帰ってくる頃かなー。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると
前方から大きな画商バッグを抱えたテオがやってくる。
「テーオ、今帰りー?」
テオ「アーサーか。そうだが。どうかしたか?」
そういえば、アナスタシアの姿が見えない。今日はテオと一緒の筈だから途中で別れたのかな?
「んー?別に?そういえば途中の大雨は大丈夫だったー?」
テオ「ああ、俺はその時室内に居たからな。雨が止むまで休ませて貰っていた。駄犬は大丈夫だったか?」
「あれ、アナスタシアと一緒だったんじゃないのー?」
テオ「途中まではな。駄犬は日暮れ前に屋敷に帰らせた筈だが?」
「えっ…?」
日暮れ前と言えば、もう3時間以上は経っている。
「アナスタシア、帰ってないよ…?」
テオ「なんだと?あいつのことは大通りまで送ってそこから馬車で屋敷へ帰るように言った。俺が駄犬と別れたのは4時間以上は前だ。日暮れ前に屋敷に着いていないのはおかしい…」
嫌な予感がした。
「テオ、アナスタシアはまだ帰ってきていない。テオがアナスタシアと別れたのはどこの大通り?」
テオ「待て、それは本当か?あの辺の大通りは比較的治安は良いが、一歩裏通りへ入ると違法オークションや人身売買が横行している。あいつには裏通りへ行くな、すぐに馬車で帰れと伝えたが…まさか、な。」
人身売買…テオの言葉に血の気が引く。
もし彼女が裏通りへ行ってしまっていたら…?
「アナスタシアを探そう。嫌な予感がする…。」
彼女が危ない。居てもたっても居られない。
テオ「ああ、俺は屋敷の皆んなに伝えてくる。伝えたらすぐに追う。」
「俺は先に行くよ!あの辺りのキナ臭いところは片っ端から潰そう。早く彼女を見つけないと!」
言い終わる前に、俺は屋敷を飛び出した。