第10章 10
ここから一部暴力的な表現を含みます。
苦手な方はご注意ください。
……
「ひっ…!」
私は予想外の光景に声を上げる。
なにこれ、人が檻に…手足を縛られて…
目の前の光景の意味がわからなくて、しばらく固まってしまった。
でも、直感でわかる…これは何か怖いもの。逃げなきゃ…
絶えず聞こえる呻き声と泣き声、そして檻に身体をぶつける音。
逃げなきゃいけない、ここは危ない。怖いところ。でも足がすくんで動けない。
恐怖のあまり腰が抜けてその場にドサリと座り込んでしまった。
その拍子に、側に落ちていた鎖が大きな音を立てる。
?「誰か居るのか?」
低い男の声がする。
?「まったく、まだオークションの準備は済んで無いぜ?なにせこの愚図供が目玉商品を逃しちまったからなぁ。」
男の声と、足音が近づいて来る。
それに、何かを引きずる音。
?「始まるまでこの愚図と遊んでやってくれや。殴りすぎて意識朦朧だが、死んじゃいねぇからよ。」
大きな男のシルエットが見える。薄暗さに目が慣れた私はその男が引きずっているものが何かを理解した。それと同時に大きな男が私の前に辿り着いた事に気がつく。
?「あ?なんだぁ?お前は…女?」
男が引きずっていたものを投げる。投げられたものはぐっ!っと苦しげに呻く。
「ひ…」
声が出ない。
怖い
?「お前、なかなか綺麗だな。ちょうど今日の目玉の女が逃げちまったんだよ。お前を代わりに出してやる。わざわざ商品にされに来るなんてなぁ。」
男は私の全身を舐めるように見ていやらしく笑う。
「や、やだ…私は…」
なんとか絞り出した声。しかし恐怖のあまり最後まで発することが出来ない。身体はガタガタと震えている。
逃げなきゃ、でも足に力が入らない。立てない。
?「暴れられちゃ困るから出番まで少し眠っていてくれや。商品にキズ付けちゃいけねぇんだけど、薬を取りに行くのは手間だ。」
ドスッ
「っう…」
お腹を強く殴られ、私はそのまま意識を失った。